コロナ後遺症の予防をターゲットにした
「食べるワクチンアジュバント」の開発
順正学園 九州保健福祉大学免疫学研究所長の池脇信直教授(専門は公衆衛生学)は、「100歳まで健康に生きる」をコンセプトに健康維持・増進のための機能性多糖体(β-グルカン)の研究開発を長年行っています。商品化に成功した3種類のβ-グルカン(写真)は、免疫増強作用を有するとともに、多様な生理活性作用があることが証明されています。今回、コロナ後遺症の予防に「食べるワクチンアジュバント」としてのβ-グルカンの有益性を解説した論文を国際的に権威のある医学誌「Vaccine」(DOI:10.1016/j.vaccine.2023.03.005) に山梨大学医学部臨床研究推進センターのアブラハム博士と共同で発表しました。
新型コロナウイルス感染後は感染防御の中和抗体だけでなく、感染を高める感染増強抗体が産生され、免疫力が低下する可能性があることが報告されています。新型コロナウイルス感染症が収束する中、新型コロナウイルスに再感染することで免疫力が低下し、感染増強抗体による重症化やコロナ後遺症(long COVID)の発症が懸念されています。コロナ後遺症は、倦怠感、呼吸苦、咳、味覚・嗅覚障害、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下などが主な症状で、特に、血栓による臓器障害がある場合は、生涯にわたって後遺症を患う可能性もあります。現在、コロナ後遺症の根本的な解決法はまだ見つかっていません。
論文では、免疫システムのすべてのアーム(腸管免疫・自然免疫・訓練免疫・獲得免疫)を強化する「食べるワクチンアジュバント」としてのβ-グルカンが再感染後の感染増強抗体の産生を抑制し、コロナ後遺症を予防するための新たな戦略(図)が解説されています。この論文は世界中の研究者や研究機関から、次世代の「食べるワクチンアジュバント」として大いに期待されています。
免疫学研究所は、免疫学の分野における独創的・総合的・学際的研究を通して、人々の健康と医療の発展に貢献することを使命として、研究所のリソースを最大限に活用しながら、これからも教育現場、医療現場さらには世界の人々に向けて情報を発信して参ります。
★論文はこちらから ⇒ DOI: 10.1016/j.vaccine.2023.03.005
Nobunao Ikewaki, Samuel JK Abraham : Antibody dependent disease enhancement (ADE) after COVID-19 vaccination and beta glucans as a safer strategy in management.
Vaccine. 2023 Apr 6;41(15):2427-2429. DOI: 10.1016/j.vaccine.2023.03.005